くらしのたねまき シンポジウム vol.1

REPORT

●田中さん(大元学区連合町内会長)
「これからの暮らしに必要なこと」

みなさん、こんにちは。ご紹介にあずかりました、大元学区の田中でございます。よろしくお願いします。私の話というのは、地域を考えるということで、まず1つは、大元学区の特徴。2つ目が学区の現状の課題。それから3つ目が今後の方法と今の取り組み、ということで話をさせていただきたいと思います。

【大元学区の特徴】

大元学区はこの東の学区なのですが、昭和40年頃から岡山市の西部地区の各整備事業が始まりまして、東西南北に広い幹線道路ができ、店舗や住宅がだんだん増えまして、人口が急増しました。昭和48年に、鹿田小学校の一部と西小学校の一部を分離統合しまして、できたのが大元学区でありまして、現在46年目になる、まだ若い学区であります。

当時の学区は田んぼがたくさん見られ、水稲や井草栽培が盛んなところでありまして、広い田んぼの真ん中に小学校や幼稚園がポツンとあるような、そんなのどかな田園風景が広がっていた地域でございました。

学区の発足当時は人口が約7000人おりました。その中でだんだん都市化が進んできまして、毎年人口が増加し、現在マンションが約50になりまして、人口の方は1万7000人になりました。最近は、人口の伸びはずっと横ばい状態ということでございます。

平成26年に、中国地方の住みたい街ランキングで広島の横川が1位だったんですが、その次に大元が第2位にランクされたというようなこともありました。学区の最大の行事としましては、7月末にサマーフェスというお祭りをやっているのですが、約1万人集まります。それから秋の体育祭、12月のウォーキング大会、そういったものを開催しておりまして、今日の議題でございます、防災につきましては、平成26年度に、学区の自主防災会を立ち上げまして、防災訓練や、防災に関する講習会を実施しているところでございます。

この度の7月豪雨では、大元学区は被害としては、本当に幸いですがありませんでした。多くの被災された方にはですね、1日も早く、普段の生活に戻れるように願うところでございます。

今年の3月に住民の防災に対する意識を高めるために学区の防災マップをつくりました。初版です。ですので、どういうふうにつくったらいいのか分からなかったのですが、とりあえずつくろうということで、7000部こしらえまして、全戸配布と小学校、幼稚園関係者さんなどにも配布をしたところでございます。

大元は用水がたくさんありますので、内水氾濫が一番危険ということで、現在でも用水に柵がないところがありまして、柵がないと内水氾濫が起きますと道か用水か分からなくなります。マップ作成にあたり、各町内会と小学校のPTAが一緒になりまして、町内会は避難所の警備、学校のほうは通学路の危険箇所を調べて、それをマップに掲載いたしました。

それからまた最近では、どこの学区も一緒なんですが高齢化が進んでおりまして、避難所まで歩いていけない高齢者もたくさんいまして、どうしたらいいのかなということで検討しまして、避難場所として適するところを探し、ご理解を得て、「一時避難場所」として今年3か所、協定を結んだところです。

岡山は災害が少ないところだと言われておりますが、これからは地域ぐるみの防災をどんどん考えていかなければいけないのではないかなと、特にご近所の方の声掛け等々もこれからは必要になってくるのではないかなと思います。大元は今年の11月の25日に小学校で防災関連の集いを計画をしております。

【大元学区の現状】

次は学区の現状です。岡山市の高齢化率は25.4%で4人に1人が高齢者ということですが、大元は15.7%ということで、岡山市内では3番目に低い地域となっております。マンション以外では他の地域と同様に高齢化が進んでいるところでございます。

ちなみに、高齢化が1番低いのはここの西学区です。次に、第2位は澤井さんが話された御南学区。大元は第3番目。ですからこの3学区で(岡山市の)1、2、3低い学区ということで、それだけ新しい学区かなというふうに思います。

それで今、都市化が進んできまして、人口は増加し若い人が増えてきているわけですが、生活様式の変化、価値観の多様化と共に地域の連帯感の希薄化を強く感じておるところでございます。それから、地域にはあまり関わりたくないというふうな無縁化社会も進んでいるような気がします。

それから町内会の方は役員、70代中心で活動しておりますが、35町内の中で1年交代の町内会長さんが半分おります。1年交代となれば、自分の番が過ぎればいいなというような感じでなかなか活動が難しい。老人会は減少の一途でありまして、35町内のうち4つしかありませんし、子供会の方も減少傾向にあり、特に役員になることを嫌いまして、勧誘を拒否するというような傾向が出ています。

高齢化も年々進んでおりますが、最近一人暮らしの高齢者の方が増えておりまして、生活支援が必要な方、あるいは介護の問題等ありまして、家族や地域だけの対応ではたいへん難しい問題も起きております。それから今まで地域に協力的な方が高齢化によりまして、だんだん顔が見えてこない、そういったことで町内会、地域の行事などの参加者が減っている、特に若い方の参加が減少しております。

課題を3つ挙げますと、まず後継者のなり手が少ない、いないというのが一番です。担い手の育成が大きな課題であると。二つ目、地域の連帯感や共助精神が希薄になってきているのも、地域活動する上で大きな課題となっております。3つ目、高齢化によりまして、生活支援の必要な高齢者が増えています。こういう方をどうしていくかということですが、これを解決していかないと持続可能な地域づくりはできないと思っている次第です。

【大元学区の取り組み】

今後の方向と取り組みということで、私の方ではたいへん難しい課題なんですが、それならどうしていけばいいのだろう、ということです。以前は地縁関係が強く、日頃から人と人との結びつきがありまして、ご近所の助け合いが日常の姿でありましたが、都市化が進みまして、近所づきあいが少なくなっておりまして、声掛け等も少なくなってきているなあと思います。

日頃から気軽に交流ができる場づくりを行いまして、地縁や在住期間に関係なく人と人との繋がりを深めていって、共助精神や郷土愛を育んでいくことがキーワードになってくるんじゃないかなと考えております。このままで行けば、本当に地域は衰退していくんじゃなかろうかという気がしまして、何もしない地域と少しでもできることをやっていこうとする地域とでは、これから大きな差が出てくるのではと思います。

大元で取り組んでいることですが、担い手の育成と地域の活性化ということで、特にマンションがたくさんありますので、マンションの若い人をどう取り入れていくかが大きな課題だと思います。そういった中で平成27年に「おおもと支援隊」というのができまして、若い人を入れていこうと募集しております。サマーフェスタやお花見、学区の行事等々、中央公園のイルミネーション取り付け等で、一緒になってやっていこうやと、声をかけています。

もう一つは、特に小学校、幼稚園のPTAを取り込みまして、一緒になって地域の行事をするように現在心がけています。人と人との繋がりを強めるということで、これは交流と対話の場が必要になってきます。

平成29年、去年から大元ワイワイふれあいカフェを大元公民館を利用して、毎月第1第3土曜日に開いております。これは無料でどなたが来られてもいいということで、人の繋がりをつくっていこうと思っております。地域のネットワーク、各団体のネットワークが弱まっているので、それを強めていくためカフェを利用して、それぞれの団体が分担して当番制で現在やっております。

住みよいまちづくりを行うために、地域だけではたいへん難しいので、関係機関を巻き込んで今年2回会議をしました。特に行政のほうでは、市民協働局がございまして、市の社会福祉協議会、地域包括センター、保健センター、介護予防センター等々入れまして、一緒になって取り組もうということで現在のチームをつくりまして、支え合いをやっていきたいと。

それから、地域づくりは人づくりというふうに言われておりまして、支援生活サポーターといった養成講座がありますが、そうやって一緒にやっていきたいなと。それから役員等々を固定した場合はそれを嫌います。だからできる時にできる支援を、パート的な支援でもけっこうですよと話をしております。

最後になりましたが、高齢者のいきいきサロンを学区で10ヶ所開催しております。たいへん好評でして、引きこもり防止、安否確認等ができます。ちょっと長くなりましたが、ご清聴ありがとうございました。

●枝廣さん/ありがとうございました。いろんな取り組みをされているのだなと思います。田中さん、ちょっとだけ質問させていただいて良いですか? 今お話しくださったことは、おそらくどこの地域でも直面していることだと思います。特に高齢化率が岡山で3番目に低いというここですらこういう現状の中でいろいろやってらっしゃるのは、すばらしいなと思っております。

特に若い人たちを巻き込んでいきたいということでご苦労されていると思うのですが、例えばこんなことをやったらこんな反応だったよとか、こういうことだったらちょっと若い人も参加してくれたよとか、そのあたりいかがでしょう。

●田中さん/やはり若い方に参加してもらうためには楽しいことと、それからやっぱり子供さんと一緒にしたら若い人も一緒について来られるんですよね。ですから、3世代交流授業とか、餅つきとか、そういった子供さんと一緒にやれる楽しい行事を増やしていこうかな、というふうに考えています。

●会場の質問者/先ほど3ヶ所一時避難場所を協定を結ばれたと言われていたのですが、例えばどんな場所が一時避難場所になったんでしょうか?

●田中さん/1つは、岡山県理美容学校と話をしまして、6階建てくらいですかね、ご理解を得て一時避難場所ということになりました。それからもう1ヶ所はお医者さん、たきもと外科というところがありますが、今はお休みしているんです。3階建てで、2階は使ってもらってもよろしいということで、ここも協定を結びました。もう一つは黒住教。これはたいへん大きな畳敷きのところがありますので、ここも協定を結びました。

●枝廣さん/どうもありがとうございました。協定というのを私は始めて伺ったんですが、それは学区とそれぞれの例えば外科医さんとか…

●田中さん/岡山市は一時避難場所としてパチンコ屋さんとすべて市の学区が結ばれているんです。それで、あとは地域の方で結ぶ場合はですね、私のところは大元学区自主防災会というのをつくっておりますので、自主防災会で結んでおります。

●田中さん/岡山市は一時避難場所としてパチンコ屋さんとすべて市の学区が結ばれているんです。それで、あとは地域の方で結ぶ場合はですね、私のところは大元学区自主防災会というのをつくっておりますので、自主防災会で結んでおります。

●マットさん(シティ・リペア/アメリカ)
「ポートランドの取組み」 ※通訳:川本麻衣子

今日はお招きいただいてありがとうございます。「こうした方がいいですよ」と上から言うために来ているのでは一切なくて、我々がやったことがすばらしいことだと押し付けるつもりもまったくなくて、今日求められているのは、「こういうことも可能なんだよ」というのを共有させていただくということなのかなと思っています。

今やっていることに新しい方向があるとするならば、どうやったら生み出せるのか、我々のクリエイティビティみたいなものを使いながら、どんな施策を展開していけるのかというところを話させていただければと思います。 ちょっとしたリスクを伴いながら、チャレンジの心を持ちながら何ができるかということですね。アクションを取らないことこそが最大のリスクだということがあると思うので、小さなリスクを取りながらいろんなことをどのように試していけるかということをお話しさせていただきます。

【自然から学び、発想する】

ちょっと質問させていただきたいのですが、自然というのは賢いと思いませんか? 我々の中にいろいろな問題がありますが、解決策は実は自然が持っている、自然の中に答えがあると思うのです。解決策そのものが自然の中に明確に示されていることもあるだろうし、自然からヒントを得ていろんな解決策を導けることもあるだろうと思います。

先ほどお話に出た、孤立ですね、高齢者の方の引きこもりも含めた人々の孤立というものが課題としてあると思います。世界中の都市が抱えている問題ですね。人々が孤立している、繋がりがないというのは。それは、都市のデザインのされ方が、人々が孤立するようにつくられてしまっているからということがあります。

都市を開発していく中で整備をしていくわけですが、その設計が、軍隊的な効率性をめざして、直線的に整備していくというところがあると思うのです。それは、分断して管理しやすいようにするということ。ある意味、反乱などを起こさないように、パワーを持った権力者が支配しやすいようなかたちで、あえて分断してあるのです。

お互いを知り合うということにあまりインセンティブを感じない、メリットを感じないというような時代の中に暮らしているから、みんなそこに対して労力をかけることなくどんどん孤立していってしまう。

それは世界中で起きていることで、すれ違う人とか接している人は何百人何千人といるのに、だけれども誰とも繋がらずに一日が終わってしまうこともあると思います。

ことによるとペットには結びつきを感じられるけれども、隣に住んでいる人にはそういうのもまったく感じられないみたいなこともありえるかもしれません。家族にもあまり繋がりを感じられずに、感じられるのはこの犬だけみたいなことも起こってたりしますよね。(会場から少し笑い声)

ちょっとクスクスッと笑っていただいて、外れていないかなということで安心しましたけれども、今日たまたま滞在させていただいたところに2匹の子犬がいまして、強く結びついた後なので、純粋に自分の中に喜びみたいなものが湧き上がっているのを観察してまして、そこには結びつきを感じるのに、人とは結びつきを感じられないことはあるよなと。なんでだろうと思いませんか?

犬とかだとすぐに繋がれるのに、人と人だと難しかったりするって不思議ですよね。よく考えてみれば。残念ながらいろんな対話とか、人と人との関わりが大事だというところでも、なぜか共通点とか手を結べるところではなく、違いとか合意できないことに目を向けて、対話の中でもそこばかりが話されたりするということが現代社会の今だったりする。

だけれども、みんなが持ってる共通点ってあるんじゃないかなと思っていて、みんな女性という母から産まれている。そこはどんな人たちでも合意できるところだよねと、一つ思ってたりします。

みんな、現代社会という温室というか、守られた環境の中で生きてきた。そこでさっきの話に戻るんですが、我々は現代社会に生まれついてきているので、なかなか自然から学ぶということができない、学ぶ対象である自然がまわりにない。

よく考えてみれば我々がいろいろデザインしたり設計する中で、直線って自然の中にないものですよね。自然の中に直線ってまずないですよね。その直線によっていろいろ仕切られ、整備され、我々の心も箱に閉じ込められてしまうということがあるんじゃないかなと思ってます。

【マーク・レイクマンさんの取り組み】

私のポートランドの親友でもありメンターでもあるマーク・レイクマンという人物がいるんですけれども、建築家として建築業を営んでいます。彼は小さい頃から絵を描くことが大好きで、それが高じて設計士になった。自分のこのクリエイティブな才能を活かしたいということで建築家になりました。

彼はポートランドのいろんな取り組みをやってる人なので、今、話に出してますけれども、昔そんな夢を抱いて仕事を始めたんだけれども、なんか違うと。建築家として大企業でデザインをしているんだけれども、(クリエイティブなことが)できてないと思っていたと。

とにかく直線を引けと言われる。会社として請け負っていることをとにかくやれと。歯車の一つでしかないというようなことを経験して、すごく精神的に追い詰められた時があって、このままやっていたら精神的に崩壊すると。自分の生き方を変えなきゃいけないということがあって、彼は大企業である建築事務所を辞めたんですね。

生き方を再考する時間を経て、自分がやりたいことは建築とかデザインにあるということに気付きつつ、本当に生きるとか命というものを反映するような空間というものをデザインしたいと言っている。人と人とを繋ぐ空間をつくれるような建築家でありたいと言っています。

先ほど言った、みんな女性という母から産まれているという、我々の生まれた場所である子宮、女性の子宮のような場所をつくりたいと。いろいろなものが生まれる場ですね。ということで彼は都市開発に関わっていくんですけども、自然のかたちだとかそういったものからインスピレーションを受け、発想し、そういった設計をポートランドという町でどんどんしていくことになります。