【「電力」と「熱」を区別する/「家庭」と「産業」を区別する】

田中さんに準備をしていただいている間に、少しエネルギーについてお話ししたいと思います。エネルギーと言ったときに、私たちはすぐに電気のことを考えるんですね。もちろん原発事故があったり、電力って非常に大事なので、だけどエネルギーと言ったときには電力だけではなく熱、暖房とか給湯とかですね、そのエネルギーも非常に重要です。

普通の家庭で言うと実は半分以上は熱エネルギーです。なので、エネルギーの話を聞かれるときに、これは電力の話なのか熱の話なのか、それを一つ、区別されるといいなというふうに思います。

もう一つはエネルギーと言ったときに、一般家庭のお家のエネルギーの話なのか、それとも産業用の大きな工場で大量に使っているエネルギーの話なのか。例えば電車を走らせたりとか、工場でものを作ったりとか、それは大量のエネルギーが必要ですよね。家庭用のエネルギーの話なのか、それとも産業用なのか、エネルギーを考える時には、その両方が大事になってきます。

廣本さんの話は家庭用のエネルギーをどうするか。廣本さんの見て来た紫波町というところは、駅前の再開発をするときに、ホテルとか図書館とかマルシェとか、そのいくつかの建物に地域熱を供給するという仕組みを持っています。家庭より大きいけど、産業用よりは小さい、それぐらいのところだとバイオマスボイラーの大きいのを入れると、そこで熱エネルギーを賄うことができます。

なのでその話をする時に、家庭用の話なのか、もうちょっと大きいのか、産業用も含めてなのか、それを区別して考えたらいいかなと思います。

廣本さんの話にもありましたが、それが電力であれ、熱であれ、一番最初にやらないといけないのは省エネです。まずはできるだけ減らす。減らした後、それを自然エネルギーに変えていく。エネルギー政策と言ったときに、これは省エネの政策なのか、それともエネルギーを転換する政策なのか、その区別をしていただくといいかなと思います。

田中さんのお話は、日本の国のエネルギー政策に携わっていらっしゃる立場からなので、もちろん家庭用の話も出てくると思いますが、産業用をどうするかという話にもなります。

家庭がそれぞれ太陽光パネルで自立したとしても、産業用は相変わらず火力発電を使ってますというと、CO2が減らなくなっちゃうんですね。そのへんの区別をしていただきながら、お話をしていただきたいと思います。では田中さんお願いします。

【2050年の日本のエネルギーを考える】

●田中さん/先生ありがとうございます。みなさんはじめまして。資源エネルギー庁というところで戦略企画室長というポストを拝命しております、田中と申します。今日はどちらかというと、地域に密着した話ということでありましたが、どうしても私のエクスパティーが国のマクロのところから始まっておりますので、今日はちょっとマクロの話をご提案しながら、普段、自分が仕事の中では持てないような視点を、みなさんと対話しながら気づきをいただけたら大変ありがたいなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

本日いただいたタイトルが非常に大きな話でありまして、2050年に向けた日本のエネルギーということで、実は今まさに政府でも2050年を起点にしながら、エネルギー及び環境について考えていくということを、政府全体で議論がおこなわれております。

枝廣先生にも現在委員として参加していただいておりますけれども、正直に申し上げると、2050年の目標は非常に高いものがあると。それがなぜそんなに難しいのか、赤裸々にご紹介をしながら一緒に考えていきたいなと思います。

先ほどお話が廣本さんからございましたけれども、やはり地球の温暖化を考えていくことの重要性は世界的に共有されてきているわけでありますが、これはもともとSDGsという形で世界全体の課題、アジェンダが設定されている。この中で、やはりエネルギーというものが複数のアジェンダに非常に関わってくると思っております。

【エネルギー政策の3E】

例えば人々の健康や福祉というものを意識しながらクリーンにエネルギーを使えるようにする、すなわちエネルギーアクセスを担保していきながら、これが絶え間なく安定して供給されていくということが非常に重要な課題になってきます。これを我々はエナジーセキュリティー(Energy Security)と言っていて、エネルギーの安全保障という考え方、エネルギーの安定供給という観点で、我々がエネルギー政策を考えていく中でも非常に重視している視点であります。

また、貧困をなくすことや働きがいについても、経済成長といった課題もありますけれども、エネルギーをある程度、手に入れやすい合理的な価格で利用していくことが、非常に重要になってまいります。

ですので、ものすごくいいものであっても、べらぼうに高いと、その電気代が月に20万円かかりますということでは、これは使えないということになりますので、やはり合理的で安定した価格で使えると、これが一つ非常に重要だと思っております。これをエコノミー(Economy)という形で、もうひとつのEと。

3点目でありますけれども、これがまさに今、政府全体で、あるいは世界全体で取り組みが必要になっている自然環境の保護、なかんずく気候変動に対する対応ということになります。特に日本の国土保全ということであれば日本政府あるいは自治体が責任を持ちながらおこなっていけると思いますけれども、気候変動ということになりますと、やはり誰かが努力を怠るとみんなが迷惑するという、世界的な連関が出てくるものであります。

ですので、やはりこれを地球規模でみんなが、自分がやれることを取り組んでいく、何もえらい人たちだけの話じゃなくて、我々一人ひとりができることを積み上げてどこまで行けるかということが問われているのが、まさに温暖化への対応ということだと思います。

これをEnvironmentと。全部Eで、3Eという観点に基づいて、これらをバランスをさせながらエネルギー政策を組み立てていくというのが我々の基本的な視点です。

その下に書いてある供給の安全性、これがS、Safetyなんですけれども、若干エナジーセキュリティーと混同しやすいことでありますけれども、これはどちらかというとエネルギーの利用とか供給にあたって事故が起きてはいけない、あるいは災害が起きたときにこれが全部止まってしまうということにならない、あるいは人命が失われることにならない、ということで、供給の安全性、技術的な安全性を担保すると。

【電力パフォーマンスの国際比較】

これを総体としてエネルギー政策を考えていくというのが我々のアプローチであります。で、その3Eのパフォーマンスを国際比較してみたものがこの表であります。これは役所の紙ではなくて、今日、私個人でやってますので、このクレジットは田中ということでありますけれども、一つはエネルギーアクセス、安定した供給をどう見るかというのがありますが、一つは停電時間で比較をしてみたというものであります。

これはよく言われるのが、日本の電力の質が良いということで停電しづらいと言われますが、これは2014年の国際比較を海外電力調査会というところがやったものでありますけれども、日本は年間で20分、平均ですね、の停電だったと。

僕らそんなに停電するかなと思ったんですけれども、計画的に停電をしてメンテナンスをしたりするので、押しなべて見ると20分ぐらいの停電ということで、一番パフォーマンスがいいのを青色に塗ってみましたが、ドイツなんかは12分ということで、日本にひけをとらない、いい質ということになります。

一番パフォーマンスが悪いところを赤で塗っていますが、アメリカ170分、単純に言って8倍ということで、国によってけっこう質が違うということからすると、安定して供給されるという点では、非常に日本はパフォーマンスがいいほうなのかなというふうに見て取れます。

他方でもう一つ、安定という観点では、例えば何か国際紛争が起きて、エネルギーの化石燃料の供給が途絶えてしまうと、日本としてはエネルギーをほとんど輸入に頼っていますので、安定した供給ができなくなる。このエネルギーの自給率、国産率というものを見たのが次の自給率になります。

これはもう明らかでありまして、日本は7%しかないと。7%の大半は自然エネルギーと原子力発電。で、原子力発電は、これは一度燃料を入れると2、3年使えるということから、これはシャットダウンに非常に強いので、自給率に挙げているわけですけれども、特に福島の地震以降は原子力は止まっている基数の方が多くありますので、今は大半は再生可能エネルギー、なかんずく水力に頼っているという状況であります。

他の国は非常に高い、特にアメリカ92%とありますが、これデータが2015年でありますけれども、足下では100%に近付いていると思います。アメリカは石炭も天然ガスも石油も持っている国でありますので、非常にエネルギー自給は高い。

ですので安定した供給という観点で言うと、日本の課題というのは、非常に供給の安定性はあるわけですけれども、やはり自国の中での内発的な資源が少ないということですので、いかに化石燃料依存の脱却をして、国内にある資源をどう使っていくかということが非常に大事になってきます。

2点目でありますが、合理的な価格、安定した価格での調達ということで、これ価格を電気料金ですね、単位は円/キロワットアワー、1キロワットアワー当たり何円かということであります。だいたい標準家庭で月300キロワットアワー弱ぐらいですかね、使うことになりますが。

各国比較で見ていただいて、日本は高いと言われていたわけでありますが、一番高いのはドイツ。ドイツは抜きん出て高いということでありますけれど、この背景は、ドイツは再生可能エネルギーのためにFIT(固定価格買取制度)という高く買い取ってあげる制度をやっていて、再生可能エネルギーがどんどん進んでいるわけでありますけれども、それを電気料金にオンをしておりますので、電気料金がどんどん高くなっているということであります。

日本は22円ぐらいということでありますが2016年で一番安いのはアメリカ、これはもう自給率が高いことから分かるように国内に安い資源がたくさんあるということであります。

産業用というものがありまして、家庭用より産業用のほうはロットが大きいので平均単価が下がるということになりますが、アメリカにとっては7円ということであります。これに対して日本は16円ということで、この産業用の観点で言うと、非常にパフォーマンスが悪い。

日本は化石燃料依存が高いので、為替の変動や石油の価格が上がるとこれがさらに高くなりやすい。金額を見ていただくとリアルに分かろうかなと思います。特にこれは先進国での比較ですので、新興国になるともっと安い国もあります。

ですので、課題としては安価なエネルギーの選択の促進ということで、これは何を政策でやっているかというと、電力の自由化という政策を進めております。競争を促進することによって、価格が下がるように国としても進めているわけであります。

あと、1点だけ面白い見方があるんですね。家庭用と産業用の比率をご覧いただくと、差があんまり大きくないんですね。一番大きいところをご覧いただくと、ドイツは産業用の2倍以上、家庭用に寄せているという形が見てとれます。これはドイツの平均単価は高めなんですね。

FITが高いわけでありますけれども、ドイツもものづくりの国であります。鉄とか自動車とか電力の多消費の産業はけっこうございます。ですので、そこの産業化への配慮から産業用を低くして家庭用に寄せているということをやっておりますが、日本はどちらかというと、産業界側へきちんと負担を寄せているんですね。産業界側への負担感がちょっと高くなっていると見て取れるかなと思います。

最後、自然環境の保護、温暖化ですが、やはり今、最大の課題となっているCO2でのパフォーマンスをご覧いただきたいと思います。これはどういう比較の仕方があるかなと見たときに、GDPあたりのCO2がいいのかとかいろいろな議論はあるのですが、今回ご用意したのは一人当たりどれだけCO2を輩出しているかという観点で比較をしてみたものであります。

日本は一人当たり年間9トン、CO2を出しているわけであります。これは一番低いのはフランスで、4.4トンということで、日本の約半分であります。逆にアメリカは16.9トンということで、これまた非常に大きな差があるわけですね。

いかにアメリカがCO2の観点で言うとパフォーマンスが悪いかということで、これ縦でアメリカを見ていただくと赤か青どちらか入っているということで、極端な国だということが見ていただけると思いますが、フランスが非常に低い背景は、後ほど説明しますが、これは電力の中の8割以上が原子力によっているというところが非常に大きいということであります。

そういった中で、課題が下にある通り、化石燃料依存を下げていきながらコストを抑えるということでこの3つのEのパフォーマンスが上がっていくということがお分かりいただけると思いますが、そのためにも日本のアクションプランをどう描いているかというものが、まさに枝廣先生にもエネルギー基本計画を定めるにあたって議論いただいた内容に繋がってくるわけです。

【日本のアクション・プラン】

2010年、2017年度現在、それと2030年度でエネルギーの構成、我々はエネルギーミクスと呼んでおりますけれども、エネルギーミクスをどのようにシフトしていくべきかというものを、かなりこれは現実可能性が高い形で積み重ねたものを示したものがこちらであります。

左が一次エネルギー供給、右が電源構成と書いてありますが、簡単に言うと左の一次エネルギー供給というのが日本でどれだけのエネルギー投入をしているか、ということであります。例えば発電をするためにどれだけエネルギーを投入をしているか、あるいは発電以外で熱需要であったり、動力のためには運輸の部門で化石燃料も使います、そういったものでトータルでどれだけエネルギー供給をしているか、それを何のエネルギーソースでやっているか、という内訳を示したのが左側であります。

で、一次エネルギー供給の中で大体4割5分ぐらいが発電のために使われています。その時にどういうエネルギー源から発電がおこなわれているか、という内訳を示したのが右側であります。右側からご説明をしますと、発電の内訳で2010年度をご覧いただきますと火力が65%、それ以外が34%ぐらいだということで、非化石の比率が高まれば高まるほど、要は化石燃料依存を減らせる。

これによって先ほどあったような自給率を高められるとともにCO2の問題も解決できる、すなわち非化石分をどれだけ増やせるかというのが電源の部分においては大事になってくるわけでありますが、震災前に置いては原子力の方が比率が高く、再生可能エネルギー9%とありますが、これは水力がほどんどでありました。

震災が起きて、2017年度においてはむしろ再生可能エネルギーが16%伸びてきている、9と16の差はほとんど新たにFITによって入れられたものもありますが、その大半は太陽光、今、足下で太陽光が5%ぐらいの比率で来ているということであります。

原子力は3%というところに留まっております。これはみなさん報道等でもご覧いただいているかもしれませんが、原子力発電所の再開をするにあたっては地震等の新たな基準に照らし合わせて、安全性が確認されて、かつ地元の方々のご了解をいただけたものからスタートをするという手続きを踏んでいる関係上、再稼働に時間がかかっているために個々の比率はまだ小さくなっているということです。

ですので結果として震災前よりも化石燃料依存はむしろ増えている。今は81%が火力発電によって発電されていて、このうちLNGと石炭がほとんどを支えているということでありますが、これはLNGと石炭ではCO2の排出係数が違います。石炭はLNGの2倍、同じエネルギーを発生するために約2倍のCO2を出すという関係にあります。

これを2030年に向けて、今、国が目標としておりますのは再生可能なエネルギーの22~24%、原子力も22~20%まで切り上げることによって化石燃料依存を56%まで下げるという目標を持っています。

その中心となるのが、水力、太陽光、風力、バイオマス、あと地熱ですね、そういったもので構成をしていこうと思っていますが、他方、あくまで電源構成の話でありますので、先ほど申し上げたように一次エネルギー、日本で使っているエネルギーすべては左側になります。

そうするとここの非化石比率を高めたとしても、他で化石燃料というのは実は使っているわけですね、電気以外のこともありますので、表を見ると電源構成が化石依存度では56%になったとしても、日本全体の一次エネルギー供給で見ると化石依存度はそのときでも76%という高い比率に留まるということであります。

化石燃料をそのまま使うという形で代表的なものは産業利用でありまして、製鉄をするためには石炭からコークスというものを使って、コークスを炉の中で鉄鉱石を溶かして酸化還元をするという形をとっております。

製鉄だけで日本の10分の1のCO2を出しているというわけですけれども、こういった非常に高い温度での加工というのはなかなか電力では難しいということですので、単に電力だけを非化石化していけばCO2の削減ができるかというとそういうことではないということからも、社会システム全体を変えていかなければ、CO2の削減というのは難しいということになります。

【2030年に向けた進捗】

ただ、他方で電化部分はどちらかと電力部分の方が脱炭素化が簡単なので、こちらをどんどん広げていこうということで、2030年ってあと10年ぐらいしかありませんが、44%まで広げていくという目標に向かって政策を組んでおります。

上から2列、まず日本でどれだけCO2が出ているか、震災前11.4億トンだったわけでありますが、震災後1億トン増えてしまいます。これは原発が止まって、化石燃料依存が高まったために12.4億トンまで増えたと。

それが足下では11.1億トンまで減らすことができております。震災前よりもCO2が減っている状況であります。その大きな要因としては、みなさんがやっていただいた省エネと、プラス再生エネルギーの伸び、あと若干、原子力の再稼働分ということになりますが、これを9.3億トンまで減らしていくっていうのが2030年までの目標であります。

もう一つ、先ほどコストの話を申し上げましたが、電気料金が上がらないようにしていくという目標も設定しております。これは2列目の一番左をご覧いただきますと、震災前に燃料費は日本全体で5兆円かかっておりましたけれども、震災後9.7兆円かかりました。

これは、原子力が止まったことによって化石燃料で代替をしたことによって、化石燃料の利用量が増えたということで、9.2兆円まで膨らんできたということでありますが、これをなるべく9.7兆かかったものを超えないようにしようという、2030年度で9.2から9.5兆円までに抑えようという主旨であります。

そのアプローチとしては、再生可能エネルギーや原子力といったものを使っていくと化石燃料を使わなくて済むようになっていく、これによって燃料費を抑えていこうということであります。足下事実2017年度においては5兆円しかかかっていないという状況でありますけれども、他方で今、何が問題になっているかというと、FIT(固定価格買取制度)で再生可能エネルギーの導入を進めていくために、ある意味コストにプラスαをのせて導入促進をしておりますが、この買取価格は年間2.4兆円かかっております。

これは燃料費が浮いたぶんプラスでかかってくるものですので、これは合わせた価格で9.5兆円に抑えたいということですが、ご覧いただくと2013年度の買取価格が0.5兆だったものが4年ちょっとで2.4兆膨らんできたと言えるということであります。

イメージとしては、消費税1%が2.6から2.7兆円の税収というふうに言われています。消費税1%にも相当するような金額がFITの総額としてかかっているということであります。この価格をいかに抑えていくかを考えていきながら、再生可能エネルギーの導入を促進し、そしてCO2を削減していくこと、これは2030年に向けても非常に難しい政策コントロールが求められます。

ですので我々としては、今FITの買取価格の値下げというところをやりつつ、あまりこれを急激にやりすぎると一気に入らなくなってしまいますので、妥当な価格を模索しているという状況です。

【「2℃目標」と「1.5℃目標」】

今申し上げたエネルギーミクスは、「2℃目標」と「1.5℃目標」の中の「2℃目標」の数値目標になっています。すなわち、パリ協定の中では2050年以降において世界平均気温上昇を摂氏2℃以内に抑えることを目標として、NDC(国が決定する貢献目標)と2030年の行動目標を作っております。

何が根拠になっているかというと、IPCCが出しているAR4という報告書の中で「2020年には世界で20%削減されて、先進国では25~40%されなければいけない、2050年には世界全体においてCO2が50~85%削減、先進国では80~95%削減されていなければならない」という目安が出されております。

これに基づいて、世界も2030年の行動目標としてEUなんかは40%削減、日本は先ほどのミクスにすると、CO2でいうと25%、GHG(温室効果ガス)全体で言うと26%削減をするという目標になっているわけですが、2050年の目標として、先進国は80~95%削減しなければいけないということであります。

日本の長期戦略はまさに今、枝廣先生に議論いただきながら、この80%というものをおそらくは長期戦略の中でしていくということになると思いますが、50年で80%であっても2℃なんですね。先日1.5℃レポートのご紹介がありましたけれども、世界は高い目標でありまして、実は2℃目標であれば、ネットゼロ(差し引きゼロ)にする、すなわち排出と吸収をバランスする世界を、大体2070年ぐらいにめざすというのが2℃目標でありますけれども、これを2050年に前倒す内容になってきます。

ですので、2050年といっても、あと30年ぐらいしかない中で、世界全体のCO2をネットゼロにするという、しないと1.5℃には抑えられないんじゃないかなというのがレポートでありました。

で、今まだ1.5℃に対する具体的な政策的コミットメントができているのではないという状況でありますが、それがいかに難しいのかというのをちょっと、時間も押してきましたのでこの後、ご説明をしたいと思います。

一応、各国とも80とか95といったIPCCレポートに整合的な目標は出しておりまして、日本はまだこれ長期戦略を策定していません。ですので、安倍総理も出席いただきながら、このパリ協定長期成長戦略懇談会というものを立ち上げて、枝廣先生にも参加をいただきながら、これを近いうちにまとめをいただいて、今年G20が日本でありますけれども、その方向性を決めようという取り組みをしているところでございます。