テーマ「小商い〜食糧と経済の循環」
開催日時:平成30年10月27日
開催場所:くらしのたね

REPORT

【話し手】
近藤英和(自然食コタン/ 自然食品販売)
三宅洋平(三宅商店/ ライフスタイルセレクトショップ)

【聞き手】
枝廣淳子(環境ジャーナリスト)

【進行】
青江整一(くらしのたね/ミナモト建築工房代表)

<第一部のポイント>

●自然食コタンは有機、無農薬、無添加の食材を扱っている。昔の社会には添加物も農薬もなかった。それが「当たり前」の食品だった。(近藤)

●必要な分量だけ買える「量り売り」は理に適っている。(近藤)

●自分たちと繋がりのある食材(近場で生産される食材)を売りたい。(近藤)

●コタンは問屋さんを通さない。問屋さんから買うと、食品の情報が途切れてしまう。そうするとお客さんに説明できなくなるから。(近藤)

●大企業がオーガニックビジネスに参入してきた。オーガニック人口が増えている一方で、個人事業者にとっては厳しい状況。大企業の商品に価格で負けるので。(近藤)

●化学洗剤を使って洗濯をして排水を出していることと、原発の汚染水の問題を同じ重さで考えたい。日常生活から考える環境問題。足元から変えること。(三宅)

●一人ひとりの消費動向が塊になれば社会は変わる。買い物をするときに何を買うか、選択を変える人が増えれば、大きな力になる。(三宅)

●長年、ライブツアーで全国をまわっていると、だんだん日本の町が殺風景になっていってるのを感じる。全国どこも同じような店が並び、個人店が少なくなっている。(三宅)

●フランスでは「すべて量り売り」のお店が支持を集めている。近藤さんたちがやっていることは、欧米ではとても人気があり、人々が価値を認めている。(枝廣)

●アメリカのスーパーの野菜売り場には「オーガニック」と「ローカル(地元産)」という2つのコーナーがある。その両方に、それぞれ価値を置いている。(枝廣)

●ヨーロッパでは「アニマルウェルフェア」という、動物に寄り添った飼育をしましょうという考えが広がっている。アニマルウェルフェアに沿ってつくられた商品かどうかも、商品の価値になっている。(枝廣)

●自分の住む町や地球のことを考えたときに、「オーガニックかどうか」以外にも商品選びの判断要素がある。例えば家族経営の農場と契約していることなど。(枝廣)

●イギリスのトットネスという町は、町の再興にあたって、大企業を誘致するのではなく、住民みんなで個人のお店(小商い)を応援していくことを決めた。小商いが町にたくさんあるほうが自分たちにとって安心・安全だから、という考え方。(枝廣)

●地球が提供できうる資源、地球が吸収できる廃棄物、その範囲でしか私たちは持続可能な生活ができない。「地球1個分」の生活をめざさなければ、持続可能な社会を実現できない。(枝廣)

●単に規模が小さいだけではない、「ソーシャル小商い」が増えてほしい。それは、地域のものを調達して、地域に利益を還元する小商い。(枝廣)

●ここ数年で取り組んでいるのは、次の4項目の計測。「1,商行為が環境に与える影響」「2,地域内のお金の動き」「3,買い物と消費者の幸福度の関係」「4,商行為が社会にもたらす価値」。これらを数値で出せるようになれば、社会にとってより価値の高いお店がどれなのかを、客観的に判断できるようになる。(枝廣)

<第二部のポイント>

●地域の外からお金をひっぱってくるのも大事だけど、地域に入ったお金を地域内でどれだけまわしていけるかも大切。(枝廣)

●地域のお金を外に逃がしてしまっていることが多い。一人ひとりの日々の選択が町の経済を支えていくことになる。(三宅)

●お金の地域内循環が「見える」ようになるといい。地域通貨は、その可能性の一つとしてあると思う。(近藤)

●かつての地域通貨は設計がうまくできていなかったので、なかなか定着していない。そんな中でうまくいっている町もいくつかある。地域通貨は設計が大事。地域通貨をうまく循環させるには、出口(使える場所)をしっかりつくること。(枝廣)

●地産地消という言葉があるけど、「地消地産」が大切。地域で消費しているものを、地域でつくろうということ。地元で原材料をつくっても加工を地域の外でやっていたら、お金が外に出ていってしまう。(枝廣)

●日本は自給率がかなり低い。自給率100%だった頃の知恵を継承していきたい。昔の姿を学び、良いところを再発見していきたい。(近藤)

●食糧自給率の低さが、あらゆる社会問題の根底にあると思う。自分たちで食べ物をつくっていれば、土地(環境)と真剣に向き合うことになる。そうすると土地を汚される問題について、本気で考えるようになるはず。(近藤)

●電子通貨化は世界的な潮流。その一方で「実価値とはなにか」が問われる時代になると思う。(三宅)

●人の評価・信頼という価値が重視される時代が来ている。そんな中、地元に根ざしたソーシャル小商いをやる人たちがどういう役割を果たせるか。(枝廣)

●フィンランドでベーシックインカムの実験をしたところ、人々の働くことに対する意欲は下がらなかった。人は食べるためだけで仕事をするのではない。(枝廣)

●フランスを中心に、世界各国で「社会的連帯経済」が推し進められている。資本主義経済から社会的連帯経済へという大きな動きが出てきている。(枝廣)

●お金だけが資本ではない。ご近所づきあいや人の繋がりも社会資本。小商いは人の繋がりを活性化させることができる。(三宅)

●私たちがめざしている小商いは、繋がりをつくり出し、繋がりを支える、そんな存在。社会のハブとなる。(枝廣)

●アメリカではCSA(地域で買い支える農業)が広がっている。生産者と消費者でリスクを折半する。地元の小規模農家が守られ、また地域経済が強くなる。(枝廣)

●島のイベントで24時間営業の無人販売所をつくったところ、大成功だった。消費者とお店の関係を考えなおす実験としておこなったが、この経験を今後どう活かせるか考えている。(近藤)

●「それ環境破壊ですよ」と指摘するような冷たいオーラで町が包まれるのは良くない。お互いに許しあいながら前に進んでいきたい。(三宅)