テーマ「里まち暮らし〜水と緑のネットワーク」
開催日時:平成30年12月15日
開催場所:くらしのたね

REPORT

【話し手】

加藤禎久「世界で進むグリーンインフラ」

四井真治「暮らしの仕組みとパーマカルチャー」

【聞き手】

枝廣淳子(環境ジャーナリスト)

【進行】
青江整一(くらしのたね/ミナモト建築工房代表)

【第一部のトーク内容のポイント】

<岡山市庭園都市推進課・宮内さんのお話 >

●岡山市の「緑の基本計画」のポイント1、「岡山ガーデンリング」。市の中心部を取り囲む周辺4山と近郊5山の風景を守っていく。

●岡山市の「緑の基本計画」のポイント2、「量から質の向上へ」。公園をむやみに増やすのではなく、市民ニーズに合わせて再編していく。

●岡山市の「緑の基本計画」のポイント3、「パークマネジメントの推進」。行政と市民で一緒に公園を運営していこうという取り組み。

●岡山市の1人当たり公園面積は政令市の中では全国で第2位。

●西川緑道公園の「満月バー」はパークマネジメントの成功例。全国でも優良な事例として紹介されている。

<岡山大学准教授・加藤さんのお話 >

●グリーンインフラとは、自然の持つ様々な機能を利用したインフラ・土地利用のこと。それにより、持続可能な社会と経済の発展につなげる。

●グリーンインフラの事例として、多自然型の川づくり、緑の防潮堤、都市公園緑地の整備、生物共生などが挙げられる。

●グリーンインフラは防災・減災にも貢献する。古くからある貯水池、遊水池もグリーンインフラの一種。また、都市公園や緑地は延焼防止帯になる。

●自然物だけがグリーンインフラではない。雨水が浸透しやすいアスファルトや、雨水タンクなどの人工物もグリーンインフラに含まれる。

●ポートランドの家の「雨庭」の紹介。下水道氾濫を防ぎ、動植物の住処にもなっている。

●ニューヨークには都市の雨水が集まるようデザインされた湿地帯がある。災害時に水の被害を抑える。普段は人々が自然と触れあえる空間になっている。

●これまでのインフラが主に単一の目的で作られているのに対して、グリーンインフラは様々な目的に対応できる。また、コストも抑えられる。

<パーマカルチャーデザイナー・四井さんのお話 >

●オーストラリアのデビッド・ホルムグレンとビル・モリソンが考えた「パーマネント・アグリカルチャー(持続可能な農業)」が、パーマカルチャーの起源。

●マイ箸、マイバッグ、エコカー、エコハウスなどの「省エネ」は、本当のエコロジーではない。エネルギーや資源の使う量を減らしているだけで、根本が変わっていない。

●人間は、暮らし方次第で、その場所を豊かにすることができる。栄養とエネルギーを循環させ、他の生き物を増やすきっかけをつくることができる。

●現代人は、農作物からもらったミネラルを海に流してしまっている。本当は土に還して循環させないといけない。

●栄養を循環させず、農薬も使うので、この数十年で農地の土壌がどんどん貧しくなっている。

●昔はみんなバイオマス・エネルギーで生きていた。竃や七輪はとても良い文化なのに、それが失われてしまった。

●排水を浄化する「バイオジオフィルター」。水路を作り、微生物で有機物を分解し、植物に栄養を吸収してもらうことで、水きれいにする。

●生ごみも、落ち葉も、おしっこも、飼っている動物の死骸も、すべて堆肥にしている。それが畑に還り、やがて新たな命に置き換わる。循環する。

●魚と植物を同時に育てるアクアポニックス。雨水とおしっこと微生物だけで、ドジョウと空芯菜を育てている。

●かつて私たち日本人が持っていた生活の技術と文化をもう一度取り戻してほしい。それによって地域が強くなり、また災害に対処できる力も持つはず。

【第二部のトーク内容のポイント】

●四井さん/バイオジオフィルターの水路は、排水の量や質に合わせてデザインする。4人家族だと長さ10メートルくらい。そこにセキショウ、クレソン、空心菜、菖蒲などを植えている。

●四井さん/自然の力を活かして生活するということは、逆に言えば自然の力の範囲内で生活するということ。限られたエネルギーの中で自分たちの暮らしをどう組み立てていくのかを考えることが大切。

●加藤さん/「環境保護か経済発展か」の二項対立ではなく、「持続可能な開発」をめざすのがグリーンインフラの考え方。

●枝廣さん/人間の暮らしが自然環境に「マイナス」の影響を与えるから、それをできるだけ減らそうとする取り組みが多い中、四井さんの暮らしは、人間の暮らしが自然を豊かにできることを証明している。「プラス」を生み出している。そこが凄い。