テーマ「エネルギーの未来」
開催日時:平成31年2月16日
開催場所:くらしのたね

REPORT

【話し手】

田中将吾(経済産業省 資源エネルギー庁 長官官房 総務課 戦略企画室長)
「ローカルグリッド 2050年の日本のエネルギーを考える」

廣本悦子(認定NPO法人おかやまエネルギーの未来を考える会 会長)
「岡山での草の根活動 その思いと未来シナリオ」

【聞き手】

枝廣淳子(環境ジャーナリスト)

【進行】
青江整一(くらしのたね/ミナモト建築工房代表)

【枝廣さんのお話のポイント】

●エネルギーの話は様々な分野に関係がある。環境問題、防災、地元経済、すべてと繋がっている。

●エネルギーについて考えるとき、それが「電力」の話なのか、「熱」の話なのかを区別する。また、「家庭」のエネルギーの話なのか、「産業」のエネルギーの話なのかを区別する。

●エネルギー政策について聞くとき、それが「省エネ」についての政策なのか、それとも「エネルギー転換」についての政策なのかを区別する。

●北海道の下川町が木質バイオマスボイラーを導入した。それによって町の外へ出ていくお金のうち、年間3億円を町にとどめる(地域でまわす)ことができるようになった。エネルギーを自給すると、地元の経済にもプラスになる。

【廣本さんのお話のポイント】

●「おかやまエネルギーの未来を考える会」がめざしているのは自然エネルギーの導入促進。これまでに市民共同発電所(太陽光発電)を岡山県内に計11基設置した。

●また、木質バイオマス発電や小水力発電の可能性の調査や、自然エネルギーについての啓発活動などをおこなっている。

●IPCCの特別報告書によれば、2050年までに平均気温の上昇を1.5度に抑えるのはかなり難しく、危機的な状況にある。できるだけ再生可能エネルギーへの転換を。

●木質バイオマスエネルギーを使った地域熱供給システムを導入している岩手県紫波町や徳島県神山町の事例について。

●太陽光発電をし、余った電気を電気自動車に貯めて蓄電池として利用できる機器「V2H」について。

●地域でエネルギーを自給できれば、そのぶんのお金が地域の中でまわっていく。環境問題だけではなく経済にも繋がっている。

【田中さんのお話のポイント】

●エネルギー政策を考えていく上で重視しているのは、安定した供給(Energy Security)、合理的な価格(Economy)。温暖化への対応(Environment)の3E。

●日本のエネルギー自給率(国産率)は7%。つまり、ほぼ化石燃料の輸入に頼っている。いかにして化石燃料依存を脱却していくか。

●日本は一人当たり年間9トンのCO2を出している。これは世界130か国の平均値より少し下あたり。

●電源構成において、日本の化石燃料依存率(火力発電率)は現在81%。これを2030年に56%まで下げることを国の目標にしている。これによりCO2を削減し、自給率を向上させる。

●パリ協定では、2050年に世界の平均気温の上昇を2℃以内に抑えることを目標として、2030年までの行動目標を作っている。日本の目標はCO2削減25%。

●日本は、国土面積当たりの再生可能エネルギーの導入量は、世界各国の中で高いほう。ただ、日本は国土面積あたりの人口が多い(需要が多い)ので、再生可能エネルギーの比率では低くなる。

●集中型電源と分散型電源、それぞれの長所・短所を踏まえて、分散型(太陽光発電など)を増やしていくことが大切。分散型導入のコストはだんだん下がってきている。

●現在、日本の家庭での自家発電・自家消費率は全電力需要の1%。

●電気自動車を利用することで、系統電源の送電線に頼らずに太陽光発電エネルギーを安く使う方法もありえる。

●発電所は、申し込めば無料で施設の見学をすることができる。ぜひエネルギーが作られている現場を見て、個々の選択につなげていってほしい。