<第三部/参加者グループのディスカッション>

●枝廣さん/では、最後30分は自分たちの町のことを考える時間にしたいと思います。この地域、一番最初に青江さんから話がありましたが、この半径2キロの地区が岡山市の防災拠点地区ということで、駅前を含め、再開発が進んでいるし、これからも行われていきます。

そのときに、地域の人たちがこういう町にしたいとか、こういう要素を考えてほしいとか、意見を反映してもらうことがすごく大事なことだと思うんですね。今話している地域の地図を配ってもらうので、たぶん4、5人に1枚渡るかなと思うので、この地域じゃない人もどこかのグループに入ってぜひ意見を言ってください。

グループでどんな話をしてほしいかというと、地図を見ながら「この地域のこのへんはこれからこうなっていくといいよね」とか、「ここはこれから可能性あるんじゃない?」とか、例えば「お店はこことここだけど、このへん空白だよね」とか、そういう地図を見ながらのお話。

それから今日のお話を聞いて、食とか、農業とか、経済とか、小商いとかそんな話をいただいたので、そういう観点から、「再開発をする時にこういうことはきちんと市の方に考えてほしい」とか「こういう要素がほしい」とか「こういう町にしたい」とか、そういうことをできるだけたくさん集めたいと思います。

第1回のシンポジウムでもみなさんが言ってくださった意見を全部ポストイットに書いていただいたのは記録に残しています。で、4回それをやって、みなさんの意見をできるだけ集約して、住民からの提案という形にしていきたいと思います。

(15分経過)

各グループでいい意見が出ているようですが、簡単に出た意見とか思ったこととか、ポストイットに書いて地図に貼っておいてください。そうしたら、その意見を失わずに済むと思うので。

ごくごく簡単に、各チーム1分ずつ、どんな話が出たのか、書いたものを読み上げる形でもいいです。一番みなさんの中で議論になった点、それを簡単に共有してもらえるでしょうか。

●チーム1/【公共交通機関がさらに便利になれば】

こちらのチームには地域の公民館の館長さんがいて、地域の実情を教えていただきながら考えました。このあたりはマンションが多くて、今はいいんですけれども、今後20年30年を見据えたチェックをしていきたいと。それから北長瀬駅の周辺というのは岡山駅から一駅で便利なようなんですけれども、電車の本数が少ないなと。バスの台数も含め、周辺で生活しやすい町になればいいなと思います。

●チーム2/【渋滞問題】

この地域、便利なようなんだけれども、すごい渋滞にかかる。車社会なんだなというので、防災拠点として逆に不安だというところがあります。なので、小商いするとしたら、もっと鉄道とか公共交通機関とかが浸透しないと、なかなか立ち寄るのが難しいのかなという。もう一つは、すごい若い町だというふうに伺ったのですが、共働きが多いので、親ができないから子供会に入らないというふうになっていて、それも残念に思いました。

●チーム3/【みんなが集まれる場所を増やす】

マンションがたくさんあって、コミュニティーが希薄で、子供会活動とか地域の活動が少ないよねという話と、みんなが集まるようなマルシェがあったらいいなというのと、青江さんはされていますけれどコミュニティーガーデンとか、みんなが集まれる菜園とか、遊べる用水路とかあったら、という意見が出ました。

●チーム4/【図書館、居酒屋、交流スポットを】

私たちのチームはみんな子供がいて、この地区に住んでいる者ばかりです。意外とこのあたり転勤族が多いのに、県立図書館のような図書館がない、夜カフェはあるけれど居酒屋がない、交流ができるお店が少ない。あと規制のない自由な公園、砂場があったり木陰もある公園がほしい。私たち「おいでんせぇカフェ」という小商いを大元駅前でやっています。で、意外と少ないです。こういうことやっているところ。マルナカがあるんですけれども、マルナカ帰りに寄るような小商いのお店をやっています。そういうものがあまりないので、そういうのがほしいなっていう話でした。

●チーム5/【無駄がなさすぎる町も問題】

地図を見ると一目で分かるのが、非常に区画整備がされていて、都市計画が進んだ結果なんだろうなと。車は通りやすい、でも自転車や歩行者はちょっと怖い、でも総合的に考えると子育てはとてもしやすいねっていう発想が、その都市計画そのものがすごく古いんじゃないか、無駄がないんだけれど無駄がなさすぎる、公園はあちこちあるんだけれど勝手に使えないとか。というような指摘もありました。

●チーム6/【昼間人口と夜間人口を見つめる】

みなさん違うエリアから来た方で、私はそこの「こいのぼり」という焼き肉屋をやってまして、先ほど居酒屋があればっていう話があったので、居酒屋さんしようかなっていう(会場笑)。彼らが大安寺中学校のサイエンス部農業班、彼らが降り立つ北長瀬の駅から問屋町までのけっこう空白の、微妙に20数分歩く距離があって、ここに賑わいがあると、何か仕掛けができないかなという、今そこにショッピングモールができてますけれど、そこって大事なんじゃないかなということ。

商業エリアなので、昼間働きに来ている人と、夜住んでいる人と、またちょっと微妙にずれがあって、関東の人だとよく思うらしいんですけれど、防災訓練というのがないんですね、地域で。日中の防災のソフト面といいますか。働いている時の防災訓練という仕組みもつくらないとならないのではないかという。このエリアが岡山の新たな中心地となって発信できたらなと思います。

●枝廣さん/ありがとうございました。本当に短い限られた時間でしたけれど、それぞれグループでいろんな情報交換や議論ができたと思います。ぜひポストイットを貼っておいて下さい。あとで集めさせていただいて、全体的なレポートにも反映させていただきますので。

2時から始まってあっという間に3時間半、近藤さんと三宅さんのいろいろなお話も伺えたし、意見交換もできて、楽しい時間だったなと思います。ぜひ、良いまちづくりに繋げていけたらいいなと思います。最後にこの場の主催者である青江さんに、一言ご挨拶いただいておしまいにしたいと思います。

●青江/みなさん、長丁場おつかれさまでした。すごいいい会だったなと思っています。洋平君とヒデ君、本当に情熱的で、やっていることは間違っていないというか、ずば抜けている感じ、尊敬に値するんですけど、彼らに共感している人たちっていうのはすでに、すごいたくさんいます。

で、今日は実はそういう方たちばかりが集まらないように配慮をして、できるだけ今の経済の、中心の方たちに声をかけました。商工会議所に掛け合ったり。そうしたら地元の地銀さんがおられるし、大手の会社さんもおられるし、中学生もいてくれたり、町内会長さんもいてくださったりとか。

いろんな方々、多様な方々がいる中で、2人の意見を聞いて感じたものをまちづくりに生かしたい。小商い、一人の百歩より百人の一歩みたいなことだと思うんですけれども、必ずしも大きな企業がだめだとか、そういう話ではない。みんなが繋がって一つの町をつくるということを実現できたら、ここの町はとても良くなると思うんで。それは行政の力も必要になってくると思うし。そういう意味で、お二人の話もしっかりと次に繋げていきたいと思います。

次は12月15日、今度は経済ではなくインフラの話をしようと思います。インフラの中でも特にゲストが岡山大学の先生、「グリーンインフラ」という研究をされている方です。それと山梨から四井真治さんという、パーマカルチャーという暮らし方を提唱している方をお招きして、インフラの話をしようと思います。みなさん、ぜひ今回で終わらずに継続して来ていただいて、アイデアをいただけたらと思いますので、よろしくお願いします。

ちなみに、その次も言いますと、来年2月16日に、今度はエネルギーの話をします。これが最後になります。で、エネルギーの話の時は岡山でNPO岡山のエネルギーの未来を考える会の廣本さんという代表の方と、枝廣先生のご紹介で、経済産業省エネルギー庁2050年の日本のエネルギーを考える懇談会を取りまとめた方をお招きしようと思っていますので、そちらもぜひみなさん参加してもらって、一緒にアイデアを出してもらえたらと思います。

●近藤さん/今日は長い時間ありがとうございました。お二人の話、これからを考えるきっかけに自分自身なってます。自分は変わらずこのまんま食品を通じてコミュニティーをつくるとか、食品を通じて社会がどうなっていくかっていう、食品が一番、人に満遍なく接点があるものだと思って楽しくできてるんですけれども、これからもやっていきたいと思います。一緒にできるメンバー、スタッフも絶賛募集しておりますので、一緒にそういう気持ちでできる人いたらまた来てください。よろしくお願いします。

●三宅さん/ありがとうございました。先ほど、車がいっぱいあるところで防災的な観点をっていう話をされていましたけれども、前回来たマット・ビボウ君が、僕も友達なんですけれど、彼もシティ・リペアっていう活動をやっています。彼らがいろいろ研究していった結果、人々の関係性を分断しているのは道路だと。で、子供たちに「道路は危ないから渡っちゃいけません」と言わなきゃいけないまちづくりをしてきてしまったことの問題に、彼らもここ20年ぐらい真剣に取り組んでいるんですね。

交差点はそこに住んでいる人たちのものなんですよね、基本的に。ところが、行政に「子供たちが轢かれないようにここの交差点をちょっと塗りたいんだ」とか、「デザインを変えたいんだ」という申し出をして、それが実現するまでに住民がどれだけの時間とお金と労力を使わなきゃいけないかと。最初は門前払いです。ここは公共の場所だから、だれも使ってはいけません級の返事が来ちゃうんですよ。

で、そういう国全体のデザインを、じゃあ何が一番大事なんですか?ということを問い直す時代が来てると思うんですよね。だから、彼らは最終的に何をしたかっていうと、もう行政はラチがあかないので、住民の8割の合意を取ってから、勝手に交差点の横断歩道を大きく塗り替えたりとか、真っ赤な巨大な花を描いたりとかしちゃったんですね。

で、それは違法なんですよ。ただそれは彼らの信念として、ゴールが一緒ならと。行政と住民のゴールが何かということをよく考えた。ある日曜日に、住民がいっせいに交差点をペンキで塗りだした。そうしたら行政の人が飛んできますよね。彼はこう言ったんですよ。「ぼくらが正面玄関から入ろうとしたら2年もたらいまわしにされ続けたけど、違法行為をしたらその日のうちに来てくれた」。これはどっちがいいか悪いかではないんですよ。物事を変革していくときに、主役と主語が誰であるか、町は誰のためにあるかっていう。

ジーコが日本にサッカーを教えに来ていたときに「日本人の選手はルールの一歩手前に線を引く癖があるから勝てないんだ。ファールかどうかギリギリのラインを攻めないと勝てないよ」ってよく言ってたんですよ。僕は同じだと思う。交通事故を減らしたくて交差点を勝手に塗って捕まることは社会的にそんなに不名誉じゃないはずなんで。

エッジをつくという言葉を彼らはよく使います。エッジをついていく、そこに変革の大きなポイントがあるんだよっていうのは、彼らの態度の中ですごく強かったんですね。だから、目指す方向が最高にいい子ちゃんなら、やり方が少しだけ不良でもいいかもしれない。っていう感覚を今日はちょっと置いていきたいと思います。ありがとうございました。

●枝廣さん/本当に長時間にわたってありがとうございました。私もすごく楽しかったです。この地域のまちづくりを考えるというプロセスをお手伝いしていて、前回もそうでしたし、今日もいろいろな地域の方が来てくださっているというのが、一番この地域の強みだと思います。

エッジの立ったゲストを呼ぶと、エッジの立った、もしくは立てたい人しか集まらないということはよくあるんですけれども、いろいろな考えを持っている方、それから町内会、会長さんだったりとか、ビジネスの方とか、世代的にも中学生からいろんな方、地域のいろいろな人が集まって自分たちの町をこうしたい、こうだったらいいねという話ができること、それが一番のエネルギーになるんだと思います。

これをぜひ続けて、本当にいい町になったね、子供たちも孫たちも住み続けたい町になったね、ここから日本が変わったね、そんなまちづくりが続いていけばいいなと思っています。今日は本当におつかれさまでした。ありがとうございました。

【くらしのたねまきシンポジウムvol.2を終えて】 枝廣淳子

第2回はまちの生産と消費について、「小商い」をテーマに皆さんと考えました。 ゲストの近藤さんや三宅さんのお話から、単なる商売の規模としての「小商い」ではなく、小さな範囲で、つまり地域密着型で、お金も思いも人と人とのつながりも含め、さまざまなものが循環するという意味での「小商い」が大事だということが伝わってきました。

ワークショップでは、世代も立場もさまざまな地域の皆さんに参加していただき、北長瀬について気になっていることや、やってみたいことなどを率直に話し合ってもらいました。 北長瀬の地図を見ながら、さまざまな意見が出されているの見聞きしていて、とってもワクワクしました。

この2回で得られた「北長瀬の素敵なまちづくりのヒント」をもっともっと広げながら、残り2回にまたさまざまな角度から、さらに深めていけたらと思っています。