【原発/太陽光パネルの処理問題】

●田中さん/それではいただいた質問にお答えをさせていただきます。まず第1グループの方には、原発がCO2の観点で優等生と見られていることについてでありますが、データで客観的に見るとCO2が出ないということは間違いないと。で、再生可能エネルギーの対比で見ると、再生可能エネルギーは面的に土地がないといけないということに比べて、原発はエネルギー密度が高いので稼ぎやすいという点はある。けれどもおっしゃる通り、福島での事故を踏まえて、社会重要性が低くなっていて、我々としてもこれが簡単にできるとはまったく思っていないということであります。

ですので、本日のプレゼンテーションは、ゆえに原発も大事だよねということを申し上げてるつもりではない。大事なんですけどね。ゆえに原発OKと言ってくださいねと言ってるわけではなく、むしろ原発がいなくなったときに、かさが減っている中でCO2を削減することが現実として難しいことであるということを、みんなで共有をしながら、できることがなんなのかを探っていくことの重要性をお伝えしたかったということであります。

ですので各国とも原発は減らそうとしていて、フランスですらこれを50%に下げていくと言っていますが、これが2025年にやると言っていたものが2035年に延び、と言ったように延びていってるのが現状です。ですのでオルタナティブがないと減らすことができないということも、踏まえる必要があるというのが私の考えです。

2点目は太陽光パネルの有害物質でありましたが、廃棄物の処理のところについては後手にまわっていることは素直に認めざるを得ないというところは思っております。施策を始めてもう7年になろうとしていますが、こちらの循環する静脈側ですね。静脈側のお金をちゃんと持っておかないと、処理をちゃんとしていただけないということもありますので、積み立て制度を至急入れるべきという議論をしているところであります。

そのお金を積み立てていただいた上で、そのお金をどう処理すべきかっていうところ。例えば有害物質が多く含まれているもの、含まれてないものもあると思いますが、それをリサイクルする方がいいのか、あるいは捨ててしまう方がいいのかということを、環境への影響も含めて、研究をしていかなければならない。

これを今、政策に落とそうと思ったらまずはお金の部分ですね。例えば20年間お金をもらってても、あとから払えと言われてしまうと、もう使っちゃいましたということでお金がないということになると困っちゃうので、なるべく最初のほうから積み立てていただくという制度を考えていくということであります。

【熱利用の施策について】

それから第2グループの方は熱利用の話で、政策が手薄なのではないかということで、たしかに熱というのは電気に比べて距離を稼げないものですので、熱源があるところでうまく使う。熱を運ぶということが難しいので、例えば家庭の中で言うと、熱が漏れないようにする。断熱のお話があったと思いますが、熱効率を良くするというのが非常に大事だと思います。

この施策についてはスマートハウスという中で、国交相さんが断熱基準を義務化するかどうかという議論も含めてやってらっしゃいます。義務化となると市場への影響もあるのですぐにはできないところがありますけれども、努力目標にするという話も現在進んでいます。そういった家自体の熱効率を良くするというアプローチで施策をしていって、断熱窓について補助金をつけるといった施策も行われてるという状況であります。

【FIT/ローカルグリッド】

第3グループからいただいた「FITはいつまで続くのか」ということですけども、これは率直なお答えとしてはまだ決まってないし分かりませんが、ただ再生可能エネルギーの普及が自立的に、持続的に可能になったときにやめるということになると思います。

ただ、これは現状この時点でそういう状況にあるかといわれますと、今やめたらどうなるかと言うと、一気につかなくなると思うので、やはり先ほど経済性というお話がありましたけれども、さらなるメリットが見える、置くことに対して意味があるとみなさんが考えて、再生可能エネルギーが自立的に入るような環境を併せて作っていかないと、完全にやめるのは難しいかなと個人的には思っています。

FIT10年卒業したら今後どうしていくのかというところは、今FIT10年経ったものというのは、一番高い価格で買ってもらった人たちが卒業していってるということですので、正直言って原価はもう回収できてるわけですよね。

原価回収して、かつけっこう儲かった方々であります。ですのであとはこの電気を電気会社が今までと同じ料金で買えるかと言うと、それは無理ということになりますが、でも電気としての価値はあるので、それを価値として認めて電力会社もコスト分は買ってあげようという話は電力会社さんともしているという状況であります。

それと、ローカルグリッドというお話もありましたけれども、個人でやると非常に非効率なんですけれど、それを束ねていくとけっこう大きな力になるんですが、これは地域によってまったく違うんです。

需要がどういう形のものであるのか、工場があるのか、サービス業が多いのか、住民は戸建てに住んでいるのかマンションに住んでいるのか、人口密度はどれぐらいなのか。あるいは天然資源が、水があるのか林があるのかで全然違うわけなんです。

ですのでこれはある程度オーガナイズをして見れるような方が地域で「僕らこういうことができるよ」ということを束ねていかないと、なかなか難しい。国っていうのはソリューションごとに施策はできるんですけど、パッケージは地域ごとにしか作れないというところがありますので。

まさにこのような取り組みの中で、いろんな方が「じゃあうちはこういうものができますよ」とトライアル・アンド・エラーでやっていっていただくということが、ローカルの中で意味のあるグリッドができていくということに繋がるかなと思います。

●枝廣さん/ありがとうございます。追加で一つ。戸建てはソーラーパネルを乗せてっていうのは分かりやすいんですけど、うちも含めマンション族はどうでしょう? 何かそういうような取り組みとか施策とかあれば。

【マンション一括受電契約】

●田中さん/マンションはおっしゃる通り、個別に太陽光を置くというのは難しいです。なのでマンション一括受電契約というものをするという手段はあります。マンションで1つの契約にすると、低圧ではなく高圧充受電になるので基本料金が安くなって、安く買えるというのが1つあります。

マンションとしては、1つは屋上があると思います。共同設置をして売電をするというのはあるにはあると思いますが、やはりそこも最大の課題は、住民の方々がみんな合意しないとできないというところがあります。

新築マンションだとそれを条件として売るという形でやりやすいと思います。それによってランニングが安くなりますよというのが見せられればやりやすいのですが、既築でそれをやるとなると、マンションの組合の中で全員が合意しないとできないというところの難しさはあるので、最大の問題点はそこかなと思いますが、できないことではないかなというふうには思います。

●枝廣さん/去年11月に韓国の清州(チョンジュ)というところに出張に行ったんですが、空港からの道でマンションのベランダにパネルですかね? ベランダ発電がけっこう見えていて、清州の方に聞いたら、そういったものが今、清州では広がっていますという話で。技術的には可能だと思うんですが、そういうことがもっと日本でも広がるといいなと思ったんですが、そういうの知ってらっしゃいますか?

●田中さん/それは不勉強で存じ上げませんでしたが、ちょっと思うのが、太陽光って事故が多いんですね。日本は台風がたくさん来るじゃないですか。このあいだの大阪の台風のとき、メガソーラーのパネルが軒並み剥がれっちゃったところもあるんです。なので今は設置にあたってもちゃんと事故がないようにするよう厳しく見るようになってきているんですね。

何がいいたいかと言いますと、ベランダなんていうのは風のあおりを受けやすいので、そうとうきちっとした設置の仕方をしないと、単に軽い気持ちで買ってきました。置いてみましたじゃ、落ちて人に当たって死んじゃったということになったら、これは問題だということもあるというのは、ちょっとご認識いただきたいです。

●枝廣さん/そうですよね。そういう問題がありますよね。さっきマンションの話で一括受電の話と、マンションの屋上にソーラーを置く可能性があると。例えばマンションの全員が合意したと仮定して、マンションの屋上にソーラーを置いてそれを自分たちのマンションで使うこともできるんですよね? その上で一括受電で足りないぶんは電力会社から買うという。さっきのコミュニティでっていうのがマンション単位だったらできるっちゃできるんですよね。

ただ私もマンションの理事会、理事やったことありますけれど、合意を取るというのはそうとうにハードルが高いという問題はあるかと思います。もう1つ、メガソーラーの大規模開発で景観破壊とか、山を荒らしてるとか、そういう課題が出てきてるというコメントがあったのでそれに関して、今どんな感じでしょう。

【メガソーラーの景観問題について】

●田中さん/今、設置にあたっては、風力であれば一定規模であれば環境アセスメントの法律の網がかかっているんですけれども、ソーラーに関しては基本的には環境アセスメントにかかっていないというところがあります。

この施策をどうするのかっていうのは、環境省さんで議論が起きているということを聞いてますが、我々もFIT認定をおこなうにあたってはきちんと地域自治体や住民の方々との連携が取れていること、すなわちそういう景観問題が起きないということを認定条件に、最近では入れてきているということです。

特に分散型で自家発電・自家消費で使うぶんにはまだいいんですけど、大規模発電所みたいにしていく限りは、やっぱり発電事業者としての責任をどんどん問うていかないといけないんだという。

これは大規模でやればやるほどいろんな事故とかですね、それこそ有害物質が出るんじゃないかという懸念も含めて、対処しなければならなくなりますので、供給責任をある程度は問うていかないといけなくなると思います。

ですので今までは普及フェーズでやってきましたけれども、環境アセスメントの観点、あるいは発電事業者としてきちんとした安全を確保するとかそういったものの制度整備は今も走りながらではありますが、FITがフェードアウトしていく中できちんと、より深めて議論していかないといけないかなと思います。

●枝廣さん/このあいだ阿蘇のほうに出張で行ったときに、きれいな山並みがあるから観光客が来るんですけど、その山並みを切り開いてソーラーでだーっと覆う、そういう工事が進んでいるんですね。

原子力だったら一応、近隣自治体の合意が必要なんですけれども、ソーラーパネルだったらその土地の中でのアセスはあるけれども、山を切り開いてソーラー置かれて観光客が減っちゃったという、離れたところの利害まで入れるような形で考えていけるのか、たぶんそういうことまで考えていかないと、利を取る人は利を取るけど、遠くで被害を受ける人が出る。そうならないかなと思って。

【発電事業者の責任について】

●田中さん/そこはですね、原子力も実は法的に地域住民の同意を義務化してるかと言われるとこれはそうではないんです。原子力を再稼働するにあたっては地域住民の方々と電力会社が、地域のご意見を聞くという協定を結んで、これが担保されていると。

国の責任としては安全基準にきちんと反映されているかという安全性を見ているというかっこうになっています。ですので事業を認めるかどうかっていうのは、割り切って国の立場で言ってしまうと、やはりあらゆる経済活動の基本は相対で、私と私のあいだでおこなわれることです。

ただ他方で先生がおっしゃったように、例えば景観の価値と産業としての価値というのはその地域においてプラスマイナス必ずある話だと思います。これをどうすべきかっていうのは、基本はその地域の中で議論をして決めるべきだと私は思うし、今はそういう立場で法的構成はなされています。

さらにそれは環境アセスメントも公害とか、自然環境破壊という観点では法的にレギュレーションは得られるけれども、他方で地域の景観の価値と、そこで発電ができて経済的に潤う価値というものを天秤に掛けながら、きちんとその地域で議論していくということになると、やはりこういったものが必要だという判断になれば、例えばそういう条例を置くとか。問題が起きてる一部自治体さんではそういう条例への対応が出てきてるんだと思います。

やはりそこも発電事業者としての責任がある人をと。この発電所、メガソーラーって誰がやってるのってたどっていくとその先に転売されて、その先にまた転売されてということだと対話のしようがないわけですね。我々としてもゆくゆくは発電事業者としての責任を厳しく求めていくと。ある程度のちゃんとした発電会社にしかできないと、メガソーラーがなっていくはずなんですね。

それで事業者の規律の中で、我々としてもちゃんと地元と対話をしなさいよなど、例えば今の電力会社さんと同じように原子力やるときに地域と対話をするというような環境を作っていくのが大事じゃないかなと思います。

●枝廣さん/ありがとうございます。例えばその場所の景観が観光資源になってる人たちと、ソーラーパネルでお金を儲ける人たちが同じ自治体の中にいれば、まだそれをどうするって話ができるんだけど、たぶん自治体を越えての話になっていくので、今だとそこに対してなんらかの仕組みとか制度があるわけではない。

私たちが地域で街づくりをするときに、自分たちの地域だけではなくて、まわりの地域とどうやって対話したり、信頼関係を作っていくかという。それがないと、地域間抗争みたいな形になってしまうので、そのへんはいろんな街づくりをやっていく上で、大事な点かなと思いました。

まだまだお聞きしたいこともありますが、みなさんもたくさんコメントとかあると思うので、どなたからでもいいですが、前回のシンポジウムに出てくださった加藤先生とか四井さんとか、もしあれば先にいただいて、そのあいだにみなさんご自分のコメントとかご質問とか考えていただければと思います。

【大容量蓄電池の未来について】

●四井さん/おつかれさまでした。田中さんに2050年を見据えた施策という話を聞いたんですけど、一番気になったのが、大容量蓄電池がこれから出てきたときに、考えられる施策がかなり変わるんじゃないかなと。例えば南オーストラリア州でテスラが、その南オーストラリア州の電力の2%を蓄えられる蓄電池施設を作った。そうすると電気代が74%下がった。

全電力の2%を蓄えられる仕組みでそれが実現できてるっていうのは、これから大容量蓄電池が出てくるっていうことはかなりインパクトがあることだと思うんですよ。それが出てくることをこの施策の中では選択肢の1つとして考えられていないのかなということを思ったんですけど、それについてはいかがですか?

●田中さん/ありがとうございます。考えています。まさに今なぜ電気代が高いかというと、発電できるときと発電できないときがあった場合に、それを補うために眠っている発電機を置いておく。それは稼働率がめちゃくちゃ低いわけですね。これに固定費がかかる。例えば年間40時間しか動かなかったりする電源もあったりするわけですね。これっていくらかというとkwあたり、40円とか50円とかするわけです。

で、それを電気料金の中に混ぜれば当然高くなるわけです。それを均(な)らせるのが揚水であり蓄電池でありパワー・ツー・ガス(power to gas)と言われるような、ガスに変えて持っといて、それをまた燃やすということなんですね。

それぞれメリットデメリットがあって、一番エネルギー効率がいいのは揚水で、位置エネルギーにしてまた戻すのでロスがそんなに大きくない。蓄電池もリチウムイオンバッテリーだと、入れて出すときにだいたい2割ぐらいロスがあるが、8割ぐらいはできると。パワー・ツー・ガスは、燃焼のときの効率が悪いので、やっぱり4割ぐらいしかいかない。

いずれにしても今は蓄電池は高い。僕の認識だとテスラはあれは商売としてやってなくて、こういうものがブレイクスルーで必要だということで、だーっと入れて、破格の価格で入れてくれたので、そういうことができてると思うんですが、じゃあテスラがそれをビジネスとして横展開できてるかというと、今は必ずしもそういう状況ではないと思うんです。

それを例えばリチウムイオンバッテリーでやっていくのがいいのか、全固体電池がいいのかとか、パワー・ツー・ガスがいいのか、それぞれメリットデメリットがあるので、これから競争させなきゃいけないと思っています。

それは何と競争してるかというと、中央の大規模電源で考えると、例えば揚水であったり、石油火力であったり、稼働率が低いものと戦っていかなければならないし、あとは分散型で考えると、家庭用定量蓄電池がいいのか、あるいはエネファームみたいなものでするほうがいいのかとか。

ものによって違ってくるんですけど、今のところまだ蓄電池の経済性が、数年前に比べてそうとう安くなってますけど、揚水より安いかっていうと、ちょっと高い。揚水ってそんなに増やせないので、これからはある程度、経済性が出るところには蓄電池を置こうね、変電所に置いてローカルでも使えるようにしようね、というのは電力会社でも徐々に出てきています。

やはり蓄電池が安くなるためには民生利用によって爆発的に増えていかないと安くならないという面がありますので、今まさにFCEV(燃料電池自動車)もありますけれど、EVも今後、世界的に伸びていく中で、電池価格がより下がっていくことによって、分散型で使えるとよりリンクするんじゃないかなと思います。

なので我々の2050年の戦略の中では蓄電池の普及促進もあるんですが、どちらかと言えば、より新しい、より効率的な電池、電力の開発とか、そういったところに研究開発資金を流し込もうとやっているところであります。

●枝廣さん/ありがとうございます。では会場のみなさんからここは聞いておきたいとか、こういう疑問があるとか、もしくは聞いてみたいこととかあったら、どなたでもいかがでしょうか? 昔の政府の役人の方々は霞が関から出ずに政策を作ろうとしましたが、今はね、こうやって地域の状況を見たい、話を聞きたいって言って出てきてくださるので、ぜひたくさん持ち帰っていただきたいので。

●参加者さん/熱需要の話なんですけれど、住宅ですと3分の2が熱需要で、暖房と給湯というところがものすごく大きい。熱はたしかに距離が近くないといけないので、例えば各団地ごとであるとか、各都市のエリアごとでの熱の配給システムが必要だと思うんですけど、今は各戸でお湯を作っているような非効率な状態になっている。

というようなところから考えると、都市には都市のエネルギー施策というものがあってしかるべきだと。集中しているからこそ効率的なこともできる可能性があるよねっていうところだと思うんですね。そこは工夫のしがいがあるんじゃないかなと思っています。

特に人口密度のある都市だと、オフィスがあると思うんですが、都市の中での省エネ性能の義務化みたいなものを、もっと強化してもいいのかなと思います。それが1つのモデルケースになっていくかなと。外国とは違う、日本の事情というのは今日聞かせていただいたんですけれども、だからこそやれることをやっていただけたらいいのかなと思いました。

●枝廣さん/ありがとうございます。廣本さんと田中さんと、最後一言ずつ、今思ってらっしゃること、みなさんへのメッセージなどいただけたらと思います。

●廣本さん/前半でご意見が出てたように、自分の家で作った電気を隣に分けてあげるということはできるんじゃないかなと思うんです。制度の問題で、技術的にはできると思うので、私たちもどこかでやりたいなと思ったりはするんですが、みなさんの中でやってみようと思われた方は、まずやってみるのもとってもいいことかなと思います。

私たち紫波町に行ってきたんですけど、これから作るエリアでも、ぜひそういうものを取り入れてやっていただけたら。私たちもそれを楽しみにしています。ぜひ改善できるところはやっていっていただけたらなと思います。今日はどうもありがとうございました。

●田中さん/本日はどうもありがとうございました。貴重な機会を頂戴いたしまして、今日の最大の反省は、盛り込みすぎたな、という気がしてます。こういう機会は貴重なので、いろんなものをお持ちしたいなと思って、ギリギリまで青江さんにはご迷惑をおかけしてお持ちしました。

我々役人もですね、一国民であり、生活者であり、仕事としてやることと住民としての立場をそんなにドライに切り分けてやれるほど、そんなに強くもなくて、やっぱりこの国の行く末とか、自分の子供のこととか考えると、よりいいものを残してあげたいなという観点で、国ができることを、地方ができることを、一人ひとりができることを考えながら、毎日ある意味、試行錯誤というか、苦しみながら仕事をしてるのが実態であります。

ですので完全なエネルギー施策はないことは十分承知した上で、でもより良いものをしていきたいなと思っていますので、今日いただいたご意見とかご質問とかを踏まえながら内部の議論をし、表にもきちんとご提案をしていきたいなと思った次第であります。

その上で最後、熱のことを頂戴しましたけれども、たしかに熱政策というのは手薄、特に経産省においては手薄なのは、これは間違いないです。これは電力のほうがそうとう難しいことになっているので、そこに割かれいますけれども、カスケード利用を促進するような補助金とか、事業みたいなものをやってみたりはしています。

やっぱりうまくいっている事例といってない事例とあってですね、これもやはり、ある程度高い熱源がないと、配管で送ってる間に使えなくなるということも事実であります。地域でどういうエネルギー構造になっているのかというのが非常に重要です。

ですので一つひとつの積み上げになりますけれども、熱に対する政策っていうものを、地域に応じたご支援をするような、補助金なんかも含めて、内部でそれを加速できるような議論はしていきたいなと思っております。本日はお招きいただきまして大変ありがとうございました。

●枝廣さん/ありがとうございました。エネルギーを考えるときに、もちろんそこから出るCO2、温暖化ということもあるし、電気料金というお金の観点もあるし、地域にお金が残るだろうかという地産地消的な側面もあるし、それから災害があったときにエネルギー、ライフラインが途絶えたら困るよね、そういった意味での安心感もあるし、いろんな観点がある。そのうちいくつかはトレードオフなんですよね。

パーフェクトなエネルギーがあればいいけど、おそらくそこに行くにはまだ時間がかかる。としたら、やっぱりこうやってみんなで議論して、この地域はこれを優先しようねという、それで地域ごとに大事なものを優先するような形で、エネルギーの仕組みができていくといいのかなと思っています。それでは最後に、青江さんのほうから今後の話をいただければと思います。

●青江/みなさん今日は長時間にわたり本当にありがとうございました。廣本さんと田中さんも貴重なお時間を頂戴して、ありがとうございました。岡山での20年間の草の根活動という地に足のついた活動と、国家の戦略、その両方がここで生で聞けたことは貴重な体験だったなと思っております。

この一連の活動はずっと続けていこうと思ってるんですが、これは啓蒙活動ではなくて、実践活動、実際にこの街にどんどんアウトプットしていくことを目的にしています。ここに来られているみなさんは、ただ参加されてるというよりは、主体者というか実践者ばかりだと思いますので、エネルギーという観点、防災という観点、経済という観点で形にしていくということを、これから実際にやっていけたらと思っています。みなさんこれからもご協力よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

(おわり)

【くらしのたねまきシンポジウムvol.4を終えて】 枝廣淳子

私たちの暮らしにとっても、経済活動にとっても、エネルギーは欠くことのできない重要なものです。どのようなまちづくりを考えるとしても、「そのまちでは、どのようなエネルギーをどのくらい使っているのか。そのエネルギーはどこでどのようにつくっているのか」が、そのまちの持続可能性にとって、非常に重要な鍵を握っています。

今回は、この大事なエネルギーという側面について、地元での長年にわたる活動と、国のレベルでの長期的な動向について、学び、考えることができました。

エネルギーは私たちひとりひとりが使っているものですから、だれだって「変化」を創り出すことができます。日本政府も今後、「地域の分散型エネルギー」に力をいれていくことを明確に打ち出しています。

まちづくりとエネルギー。ぜひこれからも学び、考え、行動していきましょう!